書誌データ

1. Adventure 2(3), july, 1911: p437-443

2. New Magazine No.43, Oct, 1912: 69-77

3. Out of the Storm

Donald M.Grant, West Kingston RI, 1975

ストーリー

　「スカイラーク号」の一等航海士である主人公が、夜の見張りをしていると、一羽のアホウドリが現れた。そのアホウドリは、赤い絹のブラウスの切れ端と、ブロンドの髪を運んできたのだ。そのとき彼らはケープホーンを過ぎた場所にいて、近くに陸地などない。鳥を放してやると、次の夜には、今度は一通の手紙が鳥によって運ばれてきた。その手紙には、とある事件のためにたった一人でネズミのひしめく廃船に取り残された女性の、助けを求める言葉が綴られていた。1
　海が凪いでいて船を向けることができないという船長の言葉に、主人公は単身、救命ボートで彼女を救いに向かう。そして苦難の末、彼女を無事保護し、船に戻ったのだった。

解説

　この作品は、もともと1907年にLondon Magazineに売れていたのだが、編集者が同年他誌に掲載されていたホジスンの作品「The Mystery of Derelict」と酷似していると判断し、掲載を見送ったという作品。確かに、船の中に数え切れないほどのネズミが蠢くという点で、両作品は似ているから、それは仕方のない判断かもしれないが、こちらには「The Mystery of Derelict」にはない清々しさがある。この作品は「The Ghost Pirates」が発表された後、晴れて「Adventure」誌に掲載が決まった。
　ところで、アホウドリに結ばれた女性の手紙を読んで救出に向かうというストーリーは、ウィースの古典的作品「スイスのロビンソン」に酷似しており、ここからアイデアを得たのではないかと思われる。