書誌データ

1. Everybody's Weekly. March, 1911

2. The Haunted Pampero

Donald M.Grant, Hampton Falls, 1991

3. The Art of the Impossible

ed. Jack Adrian, Xanadu, 1990

ストーリー

　ロンドンとメルボルンを結ぶ快走帆船の二等航海士であるジェームスは、ベンディゴで大量の金を手に入れて戻る途中、船上で船長から「幽霊を信じるか」という話を持ちかけられた。話によると、船長の船室に囁き声が聞こえてくるというのだ。彼は船長と部屋を替わって、様子をみることを提案する。三日ほどはなにもなかったが、四日目、何か奇妙な音で目を醒ました。その時、ふと下の船室にある、金塊のことが頭に浮かぶ。もしかしたら、誰かが金塊を盗もうとしているのかもしれない。そう思ったジェームスは船長を起こして、金塊を確かめに行く。すると、驚いたことに『13』と番号の振られた箱だけが失われているではないか。不審に思った二人は一度外に出て、もう一度部屋に戻ったところ、なんとさっきなかったはずの箱がちゃんとそこにある！その謎を解くため、一等航海士を加えた三人で、順番にその部屋に泊まりこんで24時間、見張りをすることにした。だが、やたらと眠くなる以外、特に変わったことは起こらない。やがて船はロンドンに到着した。金塊の部屋を開けると、なんと見張りをしていた一等航海士が死んでいるではないか。さらに金塊の入っていたはずの箱には、金の代わりに鉛が入っていた。
　失われた金はどこへ？考え込むジェームズの目に、重そうな荷物を荷卸ししている様子が目に入った。もしや、と思った彼は、その荷物をつるしていたロープを切り、落下させた。するとその荷物の中から、金塊が現れた。
　実は、船大工が船に細工をして、部屋に秘密の隠し部屋をつくり、金塊の入っていた箱とダミーの箱を摩り替えていたのだった。

解説

　どこかで読んだことがあるような凡作であるが、霊現象（らしきもの）とその種明かしという、カーナッキものの変形と捕らえることも出来る一編。